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3章 3までの自然数を構成する

3章の目的

本書(小学校数学)の前提はZFC公理だけです。つまり、自然数の存在は自明ではありません。

そこで、まずは自然数を構成することが必要です。ただし、いきなり全部やると難しいです(特に、無限集合の考慮が必要です)。

本章では、有限の自然数として、10までの自然数とその足し算を考えてみたいと思います。

note

最初から無限で考えたい人もいるかもしれません。ただ、実際の小学校算数でも、一番最初は「10までのかず」を扱っていたりします。

自然数の構成

さっそく、自然数を構成していきます。ちなみに、ZFC公理のうち、使うものは以下の公理です:

  • 空集合の公理
  • 対の公理
  • 和集合の公理

まずはゼロが必要です。集合で対応しそうなものといえば空集合です。

note

最終的に、「が同じである」というのが目標です。ただ、今の時点では何も言えないので、と表記しておきます(このあとのも同様です)。

ここで、空集合の公理から、は集合です。

つぎに、「」が必要です。今度は以下のような集合を考えます:

ここで、は集合です。なぜなら、

  • 対の公理から、 は集合である
  • 対の公理から、は集合である
  • 和集合の公理から、は集合である

からです。

以降、同じ方法で以下の集合を考えます:

note

ちなみに、を書き下すと以下の通りです: また、以下の形でも表記できます:

以上により、からに対応しそうな集合が作れました。最後に、これを1つの集合にまとめておきます:

なお、も集合です。これは、対の公理と和集合の公理を繰り返し適用することで証明できます。詳しい証明は、章末コラムを参照してください。

note

を簡単に作れるのは、有限集合であるからです。無限集合を作るには、もうひと工夫が必要です。

足し算の構成

3までの集合(≒自然数)が作れたので、次に足し算を構成していきます。

有限個の数なので、地道に書き下せば、構成できてしまいます(4個の数の足し算なので、を書き下します)。

note

未定義のが出てきています。4章で4以上の全ての自然数を扱います。

書き下しの限界と次章に向けたアイデア

これで、足し算の定義ができました。ただし、上記は書き下して無理やり定義しただけです。特に、大きな数の足し算を考える際に、拡張性がありません。

そこで、「次の数」を使ったアイデアを考えてみます。

順番に並べると、であり、次の数とは、この並び順に従った次の数です。つまり、

  • の次の数はである。
  • の次の数はである。
  • の次の数はである。
  • の次の数はである。

また、次の数とは、を足した結果とも言えます。 そのため、以下のようにの和で表すこともできます:

上記を用いると、二つの数の足し算は、「を何回足すか?」で定義することができます(もしくは、「次の数」を繰り返し計算するとも言えます)。

例えば、の足し算を考えます。より、「を2回足す」(次の次の数を求める)ということであり、結果はとなることがわかります。式変形を丁寧に行うと、以下の通りです:

これが、全ての自然数に対して、足し算を定義するアイデアです。大きな数の足し算でも、同様に計算ができます。

note

本当に正しく定義できるかは、次章で検討します。特に、以下が気になるポイントです:

  • 無限個の自然数の全てに、「次の数」を正しく定義できるか
  • を何回足すか?」という定義は矛盾がないか(例えば、先ほどの計算は結合法則を前提にしていますが問題ないのでしょうか)。

まとめ

今回は3までの小さな自然数だけを対象に、その構成と足し算を考えました。次章では、いよいよ無限集合(すべての自然数)を扱っていきたいと思います。